国際学力調査テストによると韓国の学力は世界でもトップレベル。2000年の調査開始以来、数学・科学・読解力・問題解決能力のいずれにおいても常に上位に入り何度も1位を記録してきました。
*国際学力調査テスト:OECDが3年ごとに行う15歳を対象にした学習到達度調査。通称PISAと呼ばれる。
ある少女の日常は勉強15時間
BBCで紹介されたソウル市内に住む16歳の少女の日常は、8時から23時までの15時間が勉強の時間だという。1日のスケジュールは、まず6時半に起床し8時に学校の授業が開始。学校が終わるのは4時から5時で、1度自宅に戻り食事をとる。その後、18時から21時は、プライペートの先生や塾などに通う。21時から23時は学校に戻り自習を行う。自宅に帰り布団に入るのは深夜2時。そして翌朝6時半に起床というまた新たな1日が始まるのです。なぜこのような過酷なスケジュールをこなす必要があるのか。という問いかけに少女は、普段は疲れて大変でも良い成績がとれると辛いのは忘れると答えました。
教師になるのが夢だという。韓国は10万件近くもの塾が存在し保護者はその費用を負担する。生徒の4分の3が通っているという。国内に資源を持たない韓国が戦後60年間に急速な経済発展を遂げたパワーは、このような努力によるものだったとBBCは伝えています。
プレッシャーに負けてしまう若者
韓国のれんごう(聯合)ニュースが2013年に発表した韓国内9歳から24歳の若者の自殺者数は10年前に比べ0.4ポイント増え人口10万人あたり7.8となりました。2014年のコリアタイムスの調査では、約8%の若者が自殺を考えたことがあると答えたと言います。
韓国の自殺者はアジアの経済危機の1990年初頭に増えましたが、2000年以降も増え続けているというのです。学生の6割はストレスを抱えており、未成年の飲酒や喫煙に発展している実状です。
韓国を捨てる若者
韓国のハンギョレ新聞の取材によると、今韓国の若者は続々と海外に就職先を求めて韓国を離れているというのです。大学3年のとある女子学生。彼女は、卒業と同時に海外へ移住する計画をしているという。厳しい受験戦争に勝ち残って一流企業に就職できてもさらにそこからのポジション争いを想像すると耐えられないという理由。目指すのはドイツ。ドイツの現在の難民への受け入れへの前向きな政府の対応から、移民として入りやすいのではと考えているようです。
海外へ移住したいと願う若者はかなり多いという。ヘルコリア(ヘル朝鮮www.hellkorea.com)のサイトでは移住についての掲示板があり、情報共有されているようですが、移住できるのは経済的に中・上流階級にとどまり、経済的に余裕のない家庭の場合には移住の資金が確保できないため諦めるしかなく、せめてもと海外旅行に出かけることで慰めるのだそうです。
海外就職を推奨する韓国政府
韓国には政府が運営する海外就職を支援する団体(韓国産業人力公団)が存在し、海外就業研修やあっせんを行っているというのです。あっせんを通じて海外に就職した数は2013年から2014年の2年間で2880に登り、国別の内訳は1位が日本501人、続いてオーストラリア471人、シンガポール298人、カナダ274人、アメリカ203人、中国164人の順となっています。ちなみに韓国の就職情報会社が行ったアンケートによると、日本は、韓国人がアジアで最も就職したい国だそうです。
平均年齢は27.1歳平均年収は275万。職種では、事務系73%・IT9.6%・建設土木3.6%となっており、学力の高さは職種にも反映しているのがわかります。
韓国で就職が難しい理由
韓国の大卒就職率は2014年では56.2%となっています。実際にはもう少し低いのではと言われていますが、韓国の就職の難しさは、経済不況だけではないのです。韓国の就職活動で提出する履歴書に添付する入社志願書には両親の学歴や財産を書かせることが今だに行われているようです。
出身地域や自宅が持ち家か賃貸か、政治的思考や家柄までが審査の対象となっているというのです。このように過度な身上情報を要求される就職活動は若者にとって重いものとなっているのです。
ドイツへの就職を目指している女子学生は、数年前にビジネスの提案コンペに自らのアイデアを提出し、最終審査まで行ったところで、『髪を少し切ってほしい』と要求され、断念したとのことです。容姿がどう関係するのか全く理解できないという思いだったようです。
韓国では、採用試験の一次審査の履歴書の写真が重要であり、就職目的に整形を行うのは有名な話です。早朝から夜中まで勉強して頑張っている若者を大学卒業後に国外へ流出するのは、韓国にとって資源の大きな損失になるのではないでしょうか。
HWA-BYUNG(火病)という韓国名の病い
ストレスという言葉は現代病の象徴的な言葉として私たちには馴染みがありますが、韓国には「火病』というストレスを超えた病いが存在します。辛いことを我慢しているうちに精神的な苦痛から胸にしこりがあるように苦しくなり熱がこみ上げてくるような病いだそうです。米国精神医学では1995年に『HWA-BYUNG』という表記で新たな病いとして認定されたのだそうです。
人間関係や過度の業務量、リストラの不安などにより、慢性疲労からうつ病、呼吸困難やパニック障害などを引き起こすもので、調査によると韓国人のサラリーマンの90.18%が火病にかかったことがあると答えたそうです。
韓国の学生の勤勉さが報われる社会となるのを願いたいものです。
SOURCE: BBC、UPI、中央日報、wikipedia