子どもの奴隷労働、チョコレート会社が訴訟になっても増加の一途

2015年9月、世界一のチョコレートメーカーHershey(ハーシー)・Mar(マーズ)・Nestle(ネスレ)の3社は、チョコレートの原材料のカカオが、西アフリカで児童労働によって収穫されていると知りつつ使用しつづけたとして訴えられた。骨と皮だけのガリガリにやせ細った少年が大きなカカオの実の入った袋を抱えている姿は、カカオ農場で強制的に働かされている児童奴隷労働の実際の姿である。奴隷労働者の存在が公になってから15年以上が経つ。今、その数字は増えているという現実なのだ。

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ハーシーの皮肉な歴史

ペンシルバニアにある「The Milton Hershey School(ミルトンハーシースクール)」は、世界でもトップの裕福な家の子どもが通う学校として知られている。そこは、かつて白人少年孤児の学校であった。ハーシー社の創立者であるMilton S. Hershey(ミルトン・ハーシー)が設立した学校である。現在、2,000名の生徒が通う名門校となっている。

子どもを擁護し教育を与えるルーツを持つ世界最大のチョコレートメーカーは、今、西アフリカでカカオの収穫に身を削る子どもの奴隷労働に支えられているという皮肉な現実である。

訴えたのは、カルフォルニア在住の3人の民間人。チョコレートメーカー3社は、子どもの奴隷労働による生産物を原材料に使用していることをパッケージに明示せずに商品を販売した。その結果、消費者は知らずに子どもの奴隷労働密売に加担させられたと言う訴えである。

アメリカで企業規模も収益も最大であるそれらの企業が子どもを犠牲にするべきではないし、ましてや子どもを奴隷労働力にするとはもってのほかである。そして、人権侵害に目を背けるべきではない。会社は、社会的良識に基づいて行動する姿勢を貫かなければならないとするものだ。

Photo by foodispower
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最初に子どもの奴隷労働を暴いた英国メデイア

イギリスのジャーナリストは、2000年、西アフリカにて独自に取材したカカオ農場での子どもの奴隷労働のドキュメンタリーフィルムを公開した。このショッキングな内容は、多くの人に衝撃を与えた。一番驚いたのは、チョコレートメーカーであったが、これをきっかけに児童労働や奴隷労働、そして、子どもが売られていることや誘拐されている事実を知ることになり、大手チョコレートメーカーは、その撲滅に対する世間のプレッシャーを受けるようになったのである。

取組みに動いたカルフォルニア議会

このドキュメンタリーをきっかけに、撲滅に向け動いたのはカルフォルニアの上院議員であった。チョコレートメーカーが児童労働による原材料を使用していないことを証明するステッカーをパッケージに明示するという条例への取り組みであった。

下院議会を通過し、上院へ持ち込まれ、批准される直前にチョコレートメーカーの団体により、阻まれたのである。独自に撲滅への努力を行う猶予期間を設定することになったのである。その期限は2005年であった。しかし、ほぼ何も対策が進まず2008年まで延期することになり、その後も期限は延期され解決する兆しもなく15年以上経過した。

撲滅どころか増え続ける児童労働

2008年-2009年の児童労働者の数と2013年-2014年を比較すると51%増加している。そのうちの10%は、奴隷の状態にさらされているという。カカオ農場ではたらく児童は1.4万人にのぼる。そのうち奴隷労働にさらされている児童は1.1万人存在しているということになる。カカオの市場は90億ドルと言われ、その3分の2が西アフリカの生産である。世界の70%はコートジボワールとガーナで生産される。児童労働は、12歳から16歳の少年が多くを占める。5歳という子どもも中にはおり、その40%は少女だとも言われる。数ヶ月働いて親元に戻る子どももいれば生涯そこで働くものもいる。

労働環境は、子どもには危険だ。重いカカオの実の袋を持ち運ぶだけではなく、カカオの実を割る作業は鋭利な刃物を使う。害虫駆除のための消毒薬にもまみれるという子どもにとって危ない環境だという。

Photo credit http://worldwidedocumentaries.com
Photo credit http://worldwidedocumentaries.com

ドキュメンタリーフィルムが語る悲惨な実態

ドキュメンタリーフィルムでは、かつてコートジボワールのカカオ農場で奴隷労働者として働いていた少年の生々しいインタビューがあり、どれほどの過酷な状況であったのかが物語られている。その少年は、コートジボワール共和国の当局によって救出された19人の少年たちであった。

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子どもたちは、朝7時から夕方暗くなるまで働き、動きが悪いとムチで叩かれる。叩かれるのは仕事の1つであった。体調が悪くても休めない。夜は脱走を防ぐため鍵の掛かった部屋に監禁される。トイレの代わりに金属のカップを1つ渡されるという。

最初の半年は、定期的に殴られる。殴られることに馴れるまでが半年。そして、殴られることが生活の1部となってくるのだそうだ。

殴られる前に服を脱がされ、身体を紐で結びつけられ指先からつま先まで叩かれるという。逃亡を企てて捕まった時には凄まじい殴打を受ける。語ってくれた少年の他の少年たちが見せてくれたのは、背中や腹部に残る生々しいきず跡であった。数百もの線がアザになって刻まれており、未だにうっ血しているような傷もあったという。子どもたちは、わずか30ドルで家族の生活のため売られる子どももいれば、誘拐されて奴隷となる子どももいるという。

Photo by stuff.  ムチで叩かれた生々しい傷あと

Photo by stuff.
 ムチで叩かれた生々しい傷あと

先陣を切ったNestleの取り組み

ドキュメンタリーにより児童奴隷労働を知った3社のうち最初に取り組みを見せたのはNeatleであった。コートジボワールのカカオ農場にモニタリングシステムを導入したり、カカオ農場が利益をあげられるような運営の指導を行うなど、児童労働が起こり得ない環境作りに1億円を投じた。

しかしながら、抜本的な解決に結ばれることなく昨年9月にNestkeを含む3社は、訴えられることになるのである。

Nestle日本において、持続可能な社会を目指す企業としての取り組みとして、2014年から進めていたUTZ 認証ラベルの導入について、2015年9月よりキットカット全商品に導入すると発表した。訴えを受けた同月一足先であったのは、偶然だったのだろうか。そして、その直後アメリカでは奴隷状態で働かされている子どもたちを放置した責任を問われ、現実問題として児童労働者数は減っていないという現実である。

2015年9月1日 ネスレ日本は、プレスリリースにより、カカオ農場を支援する活動を発表した。

2015年9月1日 ネスレ日本は、プレスリリースにより、カカオ農場を支援する活動を発表した。

 製品が持続可能な農業をサポートしていることを保証する「UTZ 認証ラベル」

製品が持続可能な農業をサポートしていることを保証する「UTZ 認証ラベル」

奴隷労働の撲滅は近いのか

2014年にドキュメンタリーフィルムは映画として新たに発表された。これが裁判への証拠として後押しするかもしれない。最初にドキュメンタリーが発表された時、メーカーも含めたすべての人に衝撃を与えた。このような過酷な状況をすぐにでも止め、子どもたちを救わなければと誰もが思ったに違いない。

その頃、マリからコートジボワールの農場に売られた6歳の少年がいた。今はすでに成人しているほど年月が経過している。

その後もデータによると児童の奴隷労働者は増え続けていることはもはやチョコレートメーカーが奴隷労働を容認し、子どもたちを悲惨な状況に強いる役回りとなっていると見られている。

今ようやく動き出したハーシー社

今訴訟の渦中にあるハーシー社は、ドキュメンタリーフィルム公開からこれまで児童の奴隷労働者の事実を知りつつ放置してきた企業についのて記事を発表した「thedailybeast」に対し文書を送っている。

その中身は、ハーシー社が子どもたちの奴隷労働を撲滅するために始めているという取り組みの説明であった。Nestle社よりもずいぶん後になっているが、同じような内容である。

ムチを撃ちながら奴隷労働者を使い生産しなければ農業が成り立たないという現実問題がどう解決するのか

私たちが100円で買えるチョコレート。小さいものなら10円、20円のものもある。これ事態が問題だとも言われている。いったい消費者ができることは何だろう。

チョコレートビジネスにおける深く暗いこの問題は、前々からのものであり児童の奴隷労働力の問題が浮上してからもはや15年が経過した今、訴訟を起こしたカルフォルニアの3人だけに頼るだけで撲滅へ動くのだろうか。

Reference: thedailybeastprtimesfoodispower

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