日本で寝つきの悪い子どもに睡眠薬を飲ませるというのはあまり聞きませんが、カナダでは実に3割の子どもが睡眠薬を与えられているというのです。
カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究チームが、カナダの小児科学会で発表し明らかになりました。子どもをクスリで眠らせるというのは安全なのでしょうか。
子どもたちの7~8割が睡眠障害
調査は、小児救急病院を訪れた1~10歳の子どもを持つ保護者350人を対象におこなわれました。
何らかの病気で薬を処方している子どもたちでは、8割が睡眠障害を持っており、健常児でも7割の子どもが睡眠障害を持っているとのことです。そして、そのうちの3分の1が薬を処方しているというのです。
現代の睡眠障害の主な理由としてあげられるのは、コンピューターやゲームなどの電子機器の使いすぎということです。暗くなると自然に眠くなるという自然に体内で生成されるメラトニンが分泌しにくくなるというのです。
コンピューターの画面から発せられるブルーライトがお昼と夜の区別がつきにくくし、眠りのホルモンであるメラトニンに影響するということです。
ブリティッシュコロンビア大学のウエンデイ・ホール博士は、7〜8割という数字は必ずしも人口全体を表すものではないとしつつも、免疫もまだ十分でない子どもに与える睡眠薬の危険性を危惧しています。
睡眠薬の使用への調査研究が行われているのはカナダだけではありません。
オーストラリアの研究では、睡眠障害が多動症(ADHD)や自閉症などの障害を持つ子どもにも多く見られるために、薬を使って睡眠をたっぷりとることにより日中の多動などの症状が緩和されるという報告もあるようです。アメリカの医薬品協会では子どもへの睡眠薬使用を推奨していないとのことです。多くの副作用の報告や調査に裏付けされたものと考えられます。
睡眠薬とはどんなものか
睡眠障害に対し使われる一般的なクスリは『メラトニン』か『タイノール』と言われています。
メラトニンは、睡眠のサイクルを平常にもどすホルモン剤です。欧米では大人が時差ぼけを直すためなどに気軽に使うもので、健康食品店やドラッグストアで購入できるものです。
ホール博士は、健康な子どもに対しメラトニンやタイノールなどのクスリを使うことで引き起こされる副作用が心配だと語りました。
また、これらのクスリは医師の処方なしに手軽に手に入れられるため、保護者が正しいクスリの量を与えているか心配だといいます。クスリ自体もサプリメントとして扱われているため、モニタリング研究など行われずに製造販売されているのだそうです。
さらにホール博士は、子どもにも大人用の市販薬を使っている親もいるのではないかと危惧しています。
クスリに含まれるメラトニンは、体内で自然に作られる量の20倍に当たるそうですが、クスリのボトルに入っているものが、どれほどの量なのかクリアではないとのことです。
ホール博士は、クスリに頼らずして眠れるにもかかわらず、親の誤った行動で睡眠障害児を産んでいると指摘しました。
ホール博士が唱える睡眠障害を克服する方法
1. 9時より前にふとんに入ること:9時前にふとんに入ると早く眠りにつけ、睡眠が深くなります。
2.ベッドタイムの前におきまりの時間を持つ: 20分以内で十分です。
3. 絵本の読み聞かせ: 電子機器ではなく、紙の本を使いましょう。
4. 子ども自身のふとんで寝せる:ソファなど別の場所で寝かせて移動するのは、起こしてしまう可能性があります。
5. カフェインを控える:チョコレートや清涼飲料水は寝る数時間前は控えましょう。
6. ビデオやコンピューターなどの画面は寝る前は厳禁: 頭が興奮状態となるため落ち着かせることが大切です。
7. 年齢が上向けのコンピューターゲームは控える: ホルモンに刺激が強すぎるためメラトニンの自然分泌が妨げられます。
危惧されている睡眠薬による副作用
メラトニンはホルモンに働きかけるため、成長ホルモンへの刺激が強く性的な成長を早める作用があると言います。また、命の危険も報告されています。睡眠薬で深い眠りに入った子どもは、無呼吸症候群になる可能性が高まるのだそうです。
副作用の報告は子どもだけでなく大人でも多く報告されており、ゾルピデムというフランスで開発されたジェネリックの睡眠薬は、大人の使用で脳卒中や心筋梗塞・めまいなどの強い副作用が報告されています。
睡眠障害のための薬の種類はさまざまありますが、いずれも強い副作用の可能性は否定できません。子どもが眠りにつけない理由を考え、改善できることがあれば取り組むことから始め、安易に薬に頼らないようにしたいものです。
子どもに健康的な睡眠時間を与えるのは親の責任ということのようです。
Source: news.nationalpost、FOXNEWS Health、huffingtonpost