生後1カ月間だけ母乳を与えた子どもは問題行動を起こしやすく、IQや思考能力にも影響があることが専門家の研究で明らかになった。イギリスでは多くの母親は早い時期に母乳をやめ、粉ミルクを与える傾向がある。ユニセフによると母乳を長く与えることで糖尿病の発症が激減するとのことだ。
1500人の子どもを調べた結果
研究を行ったのはグラスゴー大学の研究チーム。南アフリカの子どもたち1500人、7歳から11歳までを対象に調査を行った。その結果、生後6カ月間、母乳を与えられた子どもと1カ月もしくは1カ月未満しか与えられなかった子どもを比べると、短い期間しか母乳を与えられなかった子どもは、6カ月与えられた子どもの2倍もの問題行動が見られたということだ。また、調査から母乳は成長以外にも影響があるということがわかった。
母乳は最低でも半年は与えるべき
母乳を与えることのメリットは、免疫力を高めることや消化機能を改善、ガンリスクの軽減などはわかっていたが、さらにIQや学習能力や素行にも影響するというのだ。
研究チームによると、最初の6カ月間は母乳だけを与え、その後少しずつ離乳食を与えると良いという。母乳を与えるのは長ければ長いほど子どもの免疫力を高めるとのことである。
イギリスは断乳が早すぎる
研究チームのあるイギリスでは、6カ月間母乳を与えるケースはわずか34%であり、その他の国の事例ではアメリカ49%、ドイツ50%、スイス62%となっている。
PLOS Medicineという医療雑誌の編集に携わる南アフリカの人間科学の研究者であるタムセン・ロチャット博士も同じく、乳児期の母乳の期間はとても重要だとし次のように語っている。
「幼児期に始まる行動障害が10代でも繰り返され、それが反社会的な行動や暴力、犯罪へとつながり、のちに精神が不安定になったり学習面での遅れに至る」
犯罪でのコストは年間1兆円
幼少期に問題のあった人々が起こす犯罪に使われる年間のコストは79億ポンド(約1兆円)と見込まれる。
グラスゴー大学のルース・ブランド博士は、所得高の高い国での調査から、行動障害に関わる経費は相当なものであるという結果が出ていると付け加える。
この1月にWHO(世界保健機関)は、イギリスが世界の中でも母乳で子どもを育てる期間が短いことに警告を出している。
イギリスでは生後12カ月間母乳を与えているのは、わずか0.5%の200人の赤ちゃんに1人ということだ。アメリカでは27%、ノルウエイでは35%、ニュジーランドでは44%、インドでは92%が1歳になるまで与えている割合である。
母乳を与えた女性は、乳がんにかかりにくいという母親にとっても恩恵があると言われているそうだ。
母乳をやめる時期は?
WHOによると、2歳まで必要と考えられている。6カ月から8カ月で離乳食を始めるが、2歳になるまでは母乳も与えることになっており、母乳を与えない場合には1日コップ1杯から2杯の牛乳を与えるのが好ましいとされている。