イギリスの調査機関の発表によると、数学と英語の学力テスト( GCSE )において合格レベルに達しなかった生徒の半数は、5 歳の時点ですでに学力に差がでていたことが明らかになった。
イングランドのテスト結果
イングランドの全生徒の 5 分の 1、つまり毎年約 100,000 人の生徒が、英語と数学の両方で 4 年生の合格点に達していなかった。
研究論文の共著者であるリー・エリオット・メジャー教授は、「基本的な英語と数学の得点を満たさず中退してしまう学生は全体で2割にのぼる。これは大きな問題だと唱える。
調査結果に応えて、シャドー教育長官のブリジット・フィリップソンは、保守党が幼児期のサポートを困難にしていると非難した.
政府の教育省の広報担当者は、2030 年までに 90% の子どもが筆記や数学の期待される基準に到達できるよう取り組み始めたと述べている。
今回の研究対象となった学生とは
2000 年から 2001 年に英国で生まれ、2016 年または 2017 年に GCSE を受験した 11,524 人の学生の教育の軌跡を追ってきたものだ。調査を実施したのは、エクセター大学と UCL の研究者、英国ミレニアム コホート研究のデータをもとに分析した。2022年8月下旬の査読前の調査結果である。
低得点の48%は5歳ですでに差がついていた
学者10 代の若者の 18%、つまり 5 分の 1 が、英語と数学の両方で 4 年生を達成できなかったことを発見た。 これらの生徒の半数弱 (48%) は、5 歳の時点で計算能力と読み書き能力が期待されるレベルに達してなかった。
低得点の28%は3歳児で遅れていた
彼らの 4 人に 1 人以上、28% が 3 歳の時点で学習が「遅れている」と評価されていた。
生後 9 か月の最初の調査以降、3 歳から 17 歳までの 6 回にわたって追跡調査し、学校での様子を定期的に評価した。
この論文によると、3 歳で「就学準備ができていない」と評価され、5 歳と 16 歳で予想される標準レベルを下回っていたと評価された子どもの多くは、類似した家庭環境をであることがわかった。
家庭環境の影響も
学業でついていけなく苦労している子どもは、母親が10代で出産したケースが 2 倍 (5 パーセントに対して 13 パーセント)、片親家庭がは 2 倍 (24 パーセントから 10 パーセント) であった。また、無職の家庭は、3 倍 (33% から 11%) であった。
親自身も教育の欠如
これらの子どもたちは、教育資格がない、または教育を受けていない親を持つケースが 3 倍であり、住む家は賃貸住宅が多く、狭小の室内に多くの人数が住む過密の環境で、清潔とは言えない貧しい地域にある傾向がある。
男の子、第二子、夏生まれという傾向
男の子のほうが多く(39%から53%)、初子である可能性も低かった(37%から44%)。また、夏に生まれた子どもはより学業成績が悪い傾向にあり、5 歳の未成年の子どもは、そうでない子どもの 2 倍の確率で夏に生まれた赤ちゃんであるという傾向だった。
人種による違いの考察
幼い頃の教育上の不利な点は、黒人、アジア人、または少数民族であり、母国語が英語でなく家庭で英語以外の言語 が話されている。しかし、成長するにつれて、この不利な点は解消している。むしろ英語と数学でグレード 4 以上の GCSE を達成していないのは、白人であり、家庭で英語のみが話されているというのが事実であった。
取り組みへの期待
エクセター大学の教授であるエリオット・メジャー氏は、労働党政府が低い識字率と計算能力に取り組み、私立学校の税を廃止するなど、「すべての子どもの学業レベルを引き上げるために投資するべきだ。」「政府は、就学前の子どもたちへの質の高いサポートと、幼少期に遅れをとっている子どもたちを特定し、診断し、問題を解決するため取り組むべきだ。」と述べた。
また、「すべての学校中退者が読み書きと計算能力が基準に達するように、基本的な習得値資格の導入を検討する必要がある。」と付け加えた。
また、労働党議員のフィリップソン氏は次のように述べている。
「すべての子どもが平等に教育を受ける社会になるべきであるが、現在の保守党の下では幼児教育への支援が行われにくく、金銭的な面ですべての家庭が教育を受けることは困難な状況となっている。」
考察
親自身の受けた教育や金銭的な家庭環境など恵まれない家庭の子どもは、教育を受ける機会は少ない傾向にあるというのは、万国共通ではないだろうか。支援といっても、そういった家庭にお金を与えれば解決するということではないと思われ、教育のバックアップが必要な子どもを早期に発見し手を差し伸べることができる社会になることを望みたい。
(参考)GCSEテストとは
CSE(General Certificate of Secondary Education)は、イングランド、ウエールズ、北アイルランドで運用されている学位認定制度である。GCSEは1988年に導入され、一般教育終了上級」レベル(日本における高等学校卒業程度認定試験に相当)や大学での学位取得など、後期中等教育や高等教育に進学せず、16歳で教育課程を卒業することを選択した人に対する国家資格として確立された。(Wikipediaより)
Source: Independent